親父のこと
2017-09-06


朝起きて二階のリビングに入り、レンジで牛乳を温める。
風邪薬を飲む前に、何か少し胃袋に入れたかったからだ。
その短い間に、壁に掛けてある暦を見ていた。
明日はもう白露か。
それが過ぎれば菊の節句。 
そしてすぐに秋分もやって来る。

この一カ月の間に、昼は1時間以上も短くなった。
太陽高度は10度低くなり、それだけ影が長く伸びる。
菊、彼岸花、いわし雲、赤とんぼ。
親父が倒れたのは、あの年のこんな時期だった。
救急外来のベッドで僕の手を握ってからすぐに昏睡。
そして一度も目を覚まさないまま、逝ってしまった。
もうすぐまた、命日が来る。

あの日を境にいろいろな事が変わった。
僕はあの二世帯住宅を出ることになって、また新しい住処を作った。
それがやっと落ち着いたと思ったら、今度は母の発病。
介護の末に在宅で看取って、その反動かしばらくは呆けたような時間が残った。
いや、今でもボンヤリしているけれど。

あの一連の出来事を経て、僕は何だかそれまでとは違う人間になったようだ。
考え方も、生き方も変わった気がする。
いろいろな事が、たった一本で電話で変わってしまう。
それを身を以て経験したからかもしれない。
でも、決して厭世的になったわけではない。
世の中の一切は無常である、と悟った訳でも無い。
ただ、物事に固執したり囚われたりする事が少なくなったな、と思う。
諦めが良くなったな、とも思う。
ただ歳をとっただけなのかもしれない。

仕事は特記事項なし。
明日は休み。
Mとどこかへ散歩にでも出掛けようか。
あ、でも天気悪そうだな。




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